言葉に頼る障害
30年ほど前に表参道の歩道で自分の彫刻作品を並べてストリート個展をやっていた佐々木さんという方がいて、気になる方だったので名刺交換をしていた。20年前に個展の案内をもらい、彼のアトリエを訪ねたことがあった。話が長くなってしまいその日は彼のアトリエに泊まることになった。朝を迎えた時に、紹介したい人がいると言われて、その場所から10分ほど歩いた竹林へと導かれた。竹林の脇の建物へ向かって歩く途中、50匹はいるかと思われる木々に繋がれた犬たちが私たちに向かって吠え続けた。ようやく家に入ると、がっしりとした中年の女性が迎えてくれた。佐々木さんがその女性に私を紹介すると、「あっ、あなたがhitoshiねっ」と言い、近くにうずくまる犬を指さして、彼が今日はhitoshiがくると言っていた、と言う。家にはたくさんのパワーストーンのような石が並んでいたので、それを売りつけられるのかと不安になったが、お茶をご馳走になってお土産に竹林で取れた筍を持たされて帰ってきた。彼女にはインディアンネームがある。科学的であることや合理的であることが障害にもなり得ることを思い知った経験だ。
2024.11.14 Hitoshi Shirata