会社の歯車と青い鳥
私が子供の頃、近所の商店街のほとんどの店が個人事業主だった。高度経済成長期の真っ只中、隣はフランチャイズのスーパーマーケットで、ほとんど夫婦で切り盛りしていたし、その隣は建具屋、反対側は製麺所、次が美容室、その向かいは精肉店、露店も毎日十数件はあったので、家に来るお客が「今日はお祭りですか?」などと聞いてきた。統計を調べたら、私の生まれる前だが、1950年代で就労者の4人に1人が事業主だった。現在は10人に1人である。個人事業主は組織に馴染めない変わり者として見られても不思議はない。これでは脱サラで失敗したら、それ見たことか的な視線がくるし、新たな挑戦を躊躇させる。脱サラも死語となり、ベンチャーやらスタートアップにスポットが当たっている中で尚更おじけ付く。急成長が見込める新しい分野である必要は全くない。損得ばかりに偏らない価値観が大切だ。そもそも仕事は他人の役にたつためにするものだから、大きな組織の中だと感じることが難しい。世界に目を向けると、国民の幸福度世界一のブータンが70%、アメリカは7%が就労者における個人事業主の比率だ。青い鳥は自己の足元にしかなく、追っても見つからない。
2024.6.03 Hitoshi Shirata