消費税の増税が見送られた
経済成長が停滞すると、その国の民は幸せから遠ざかることになるのだろうか? そんな疑問は愚問だろうか? それは、軍事バランスのことも真剣に考えたことのないような人が、戦争反対を唱えている状態、と同じようなレベルの疑問だろうか? 日本は世界の先進国では例を見ない、人口減少が進行する国である。経済力が衰退しないよう、一億総活躍だとか、労働生産性の向上だとか、物価上昇をベースに考える賃金上昇だとか、あらゆる手で経済成長の停滞に刺激を与えようと試みます。
が、思い通りにはいきませぬ。経済的に豊かになれないから結婚しないわけではないし、豊かでないから子供をつくらぬわけでもない。物質的に豊かになることが幸せになることではないのですから当たり前です。そして、仕事も消費のためにする行為ではありませぬ。仕事の生産性を上げて、同じ量の仕事を時短で済ませ、休みの多くとれる仕事をすることで、はたして幸福度がアップするだろうか? より多くの給料をもらい、できるだけ多くの休日を望む人が大多数だからなのだとは思いますが......。
幸せに近づくには、ささいな幸せを積み上げてゆく方法しかありませぬ。そもそも、「幸せ」とは外的要因で決まる概念ではないですね。突き詰めると、外的要因をどう捉えるかのみの、100%内的要因で定まるものです。あの幸福度の高い国民を抱えるブータン王国ですが、インド軍の駐留により、国境が守られている現実があるのですから、軍事力と同等の力を持つ経済力を上げてゆく以外、道はないのでしょう。
また、世界一貧しい大統領、ホセ・ムヒカさんの日本人への警告の言葉を思い出す。「成長を求めるな、幸せを求めよ」。仏のようなお言葉ですね。日本もブータンのように、仏教的なものの捉え方が広がることで、幸福度がアップするのかもしれませぬ。仏教の素地がありますから、日本の若手仏教関係者の方々にも一肌脱いでもらわねばいけません。昭和の流行歌の歌詞、幸せは歩いてこないだから歩いてゆくんだね、っと思って理想を描いて歩んでいても、なかなか幸せにはなれないですね。幸せは自分の足元にしか在らず、それに気づくか気づかぬかで感じられるものですから。メーテルリンクの青い鳥、チルチルミチルの冒険旅行なのです。
2016.6.03 Hitoshi Shirata