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『ボタニカ練習帖』

動物は、生きるために自分よりも弱い生き物を捕まえます。動物と違い動くことができない植物は、生きるためにどんな工夫がなされているのでしょう。筆者の瀬尾英男は、キャラクターを与えられた38つの植物にインタビューを試みます。

「せわしない男=朝顔」から始まり、「一夜限りの女=月下美人」、「体のキレが良い男=松葉牡丹」、「毒を盛る女=時計草」などなど、38人の男女(植物)が、自分の生きざまを得々と語ります。

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たとえば、「蜜をもてあます女=サルビア」との会話(括弧内がサルビア)。

「あぁ、来ないわ」
-- なにが?
「ハチドリ」
-- それは来ないでしょうね。
「冷たいのね」
-- ここ、日本ですから。
「日本にはハチドリがいないのかしら」
-- いないと思います。
「いなきゃ困るわ」
-- そう言われても。あ、もしや花粉?
「ハチドリに運んでもらう約束なのよ。それでわざわざ、彼ら好みの体にしているのに」
-- 彼ら好みの体に。
「そう。彼らは燃えるような赤が好き。地味な色には見向きもしない。しかも決して花にはとまらないわ」

といった具合。色気のある花もあれば、生真面目、頑固、武士のようなものまで、愚痴もあれば嘆きも喜びもある植物の悲喜こもごもの身の上話し。

著者:瀬尾英男
写真:齋藤圭吾
出版社:京阪神エルマガジン社


2012.10.16  Yoshitaka Haba : BACH

幅 允孝(はばよしたか)

幅 允孝(はばよしたか)

BACH(バッハ)代表。ブックディレクター。国立新美術館ミュージアムショップのスーベニアフロムトーキョーやLOVELESS、CIBONEなどにおける本のディレクションのほか、編集、執筆など、本周りのあらゆる分野で活動中。今年に入ってから、SHIBUYA PUBLISHING BOOKSELLERS、大阪の阪急百貨店メンズ館のThe Lobby、銀座のHANDS BOOKSがオープンしました。

URL: www.bach-inc.com

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