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『地球最後の日のための種子』

北極圏の永久凍土の島の地下150メートル。「地球最後の日のための貯蔵庫」と呼ばれるその施設にひっそりと収められているのは、なんと300万を超える植物の種子です。

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広大な耕地で大量生産され、産業となった現代の農業。けれど品種改良によって画一化された作物は、新種の疫病で一瞬にして滅ぶ可能性をはらんでいます。

もし地球の作物が滅亡しても、この種が農業復興の「種」となる。そう夢見た伝説の植物学者ベント・スコウマンは、植物の多様性を守るために世界の辺境をめぐり、無数の作物のサンプルを収集・貯蔵、その遺伝情報を人類の共有財産として残そうとしました。

しかしそれらの利権を寡占しようとするバイオ企業と衝突、国際問題にまで発展してしまいます。科学者たちの努力が空に消えそうになったまさにその時、シードバンクをこの世に実現させたのは、皮肉なことに新たな疫病の出現でした。

シードバンクが完成した今も、科学者と食料危機との戦いは続いています。スコウマンは言いました。「種子が消えれば、食べ物が消える。そして君もね」

著者:スーザン・ドウォーキン

出版社:文藝春秋

2011.4.27  Yoshitaka Haba : BACH

幅 允孝(はばよしたか)

幅 允孝(はばよしたか)

BACH(バッハ)代表。ブックディレクター。国立新美術館ミュージアムショップのスーベニアフロムトーキョーやLOVELESS、CIBONEなどにおける本のディレクションのほか、編集、執筆など、本周りのあらゆる分野で活動中。今年に入ってから、SHIBUYA PUBLISHING BOOKSELLERS、大阪の阪急百貨店メンズ館のThe Lobby、銀座のHANDS BOOKSがオープンしました。

URL: www.bach-inc.com

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