消費志向
百貨店の閉鎖が止まらないのだそうです。続々と閉鎖の発表が増えており、検討中の店舗も多数あるとのこと。昨年度は全体の9割の百貨店が赤字に陥ったとの試算もあるそうです。新聞記事では「消費者志向とのズレ」と括られており、再編が進んだ米国では......とアメリカの後を追う国のようにつづられます。読んでいて論調に違和感を感じます。
日本の消費市場はめまぐるしく変わっていますが、成熟した社会の中での変化の話ですから、話は複雑です。はたして永遠なる経済成長を前提としたまま、人の気持ちを括って話ができるのでしょうか。労働人口の減少が日本を窮地に追い込むのだとか、女性も老人も働くようになれば.......、とか何かに脅迫されているような気持ちになるニュースが毎日流れます。
実際のところ、たいていの人は経済成長と幸せが直接関係していないことを直感的にはわかっているはずです。金持ちになることと幸せになれることとは直接結びつかないとは解っていても、貧乏になると不幸せになるのではないかという脅迫に追われて労働する感じなのでしょうか。多くの人は人間の欲そのものをコントロールすることはナンセンスで、我慢することと同義だと思うかもしれません。欲を論ずるのは宗教家のすることだと思いこんでいるかもしれません。。
欲こそ人間を人間たらしめているはずなのですが、生きていく土台である地球環境の行方が問題にされている今、自分たち自身を救済するための人間的資質について熟考してみる必要がありそうです。それは求めすぎる「欲」そのものが、人の精神をどれだけ窮屈にしてしまっているのかについてじっくり考えてみることなのだと思います。また、欲のままにエキサイティングだと思える生活を目指し続けるとどこへたどり着いてしまうのかについてです。人が創ったものに夢中になりすぎる人々には解毒剤が必要かもしれません。
大衆消費社会の象徴だった日本の百貨店が衰退していく今、消費社会のあり方そのものを考えてみる必要がありそうです。そして、今の世の風潮である、贅沢を諦めて「明るく慎ましく」生活することが一過性のファッションではなく、生活文化の大きな前進に繋がることを祈るばかりです。
私が商売で扱う「植物」は、生物の種としては人間から遠い存在です。まるで物同然に扱う人も大勢いるでしょう。しかしながら、彼等の生き様からは多くのことに気付かされるのです。同じ地球上の生物なので生き物としての本質部分で同じ要素をたくさん持っているからかもしれません。進化の過程で得た物は多いのだけれど、失ってしまったこともたくさんありそうです。
2010.2.12 Hitoshi Shirata