豊かさについて

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豊かな社会、豊かな生活、豊かな心。豊かさの概念は時代に影響を受け、年齢に影響を受け、個人の人生観に影響を受け、揺れ動きます。「わくわく」や「どきどき」を感じるときに豊かさを感じるときもあれば、心が平安なときに豊かさを感じるときもあります。

必需品購入以上の消費行動は、消費者の「わくわくどきどき」が源なので、企業は消費者のわくわくどきどきをあおろうと必死になります。世の中はわくわくどきどきの情報で溢れかえり、今や衣食住にかかわる製造業でさえもエンターテイメント化された仕掛けで競合他社を振り切ろうとします。

溢れんばかりのエンターテイメント情報に浸りながら育った若者たちは、わくわくどきどきするコトばかりを求めて人生をさまよいます。そして青い鳥を求め続け、自分の外側ばかりに豊かさを求め続けます。濃い味の料理ばかりを食べていると、素材本来の味に鈍感になってしまうように、人工的で刺激的なものに浸っていると、こまやかな心の変化を味わえなくなるものです。

今の日本は、大人になっても刺激の中毒から抜け出せない人たちで溢れかえっており、心の平安がどのようなものだったかを忘れている人が多数を占めます。そして強欲が美化されることを醜いこととも思わなくなるでしょう。国のリーダーでさえも「お金がないなら結婚しないほうがいい」的に聞き取れる発言をしてしまう国ですから、多くの人が「豊かさ」を物質所有の多少で判断しているのは間違えありません。

東京湾のレインボーブリッジから観る東京の景観は15年ほどで様変わりしました。高層ビルとともに超高層住宅が続々と立ち並んでいます。窓が開かなく、風も通らず、無臭の住空間で育てられる子供が増えています。すべての子供たちには偏見のない澄んだ洞察力が備わっているはずですが、その力の源泉となる「自然」にふれる機会の少ない生活を続けることにより、自然物への直感が育まれないまま大人になることでしょう。

都会生活が長い方々、仕事や遊びが忙しくて自然を観察することを久しくしていない方々。まずは植物と暮らしてみてください。ペットでは駄目なのですよ! 人の思い通りにはならない、ゆっくりと動く植物が良いのです。飾り物としてではなく生活のパートナーとして接してみてください。よーく観察することで、いままでの生活で気付かなかったことがいろいろ見えてきます。そして、植物たちの慎ましく力強い生きざまから、商業やエンターテイメント産業から提供される豊かさとは、別の豊かさが見えてくるはずです。

2009.9.18  Hitoshi Shirata

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