『フローラ逍遙』
サドやユイスマンスなどアウトサイダーなフランス文学を翻訳紹介し、圧倒的な知識と夢想で数多くのフォロワーを生んだ作家、澁澤龍彦。
もはや伝説のような存在だけれど、ヨーロッパのことを多く書きながら、実際にかの地を旅したのは晩年であったり、本著も実際に花の世話から出発したわけではなかったりと、まさに夢想者な一面も。観念としての花に、軽やかな命を吹き込む名作。
その一端を、龍子夫人の言葉から伺い知ることができます。
「 わたしのいちばん好きな澁澤の作品を選ぶなら、フローラの宝石箱のような中島かほるさんの装幀も美しい『フローラ逍遥』でしょう。とくに悲しいことが書いてあるわけではないのですが、読んでいると涙が出てくるような作品です。短いものですが、澁澤のそれまでの蓄積から、蒸留水のようなもっともきれいなものだけが滴りおちて形になった、そんな透明感のある文章がとても好きなのです。彼の生前に出た最後の本という事情もあるのかもしれません。」
すでに涙が出て来てしまいそうな美しい紹介文に、これ以上いうことはありません。
2009.7.02 Yoshitaka Haba : BACH
幅 允孝(はばよしたか)
BACH(バッハ)代表。ブックディレクター。国立新美術館ミュージアムショップのスーベニアフロムトーキョーやLOVELESS、CIBONEなどにおける本のディレクションのほか、編集、執筆など、本周りのあらゆる分野で活動中。今年に入ってから、SHIBUYA PUBLISHING BOOKSELLERS、大阪の阪急百貨店メンズ館のThe Lobby、銀座のHANDS BOOKSがオープンしました。
URL: www.bach-inc.com