『未来を変える80人』
この本の紹介を書くのに随分時間がかかっているのは、どうすればこの本をなるだけ沢山に人に読んでもらえるのか、真剣に考えているからなんです。いや、ほんとに。
この本は、まだ20代と若い2人のフランス人の青年が、世界各地の社会起業家113人に出会い、その中から選りすぐりの80人分のインタビューをまとめたもの。社会企業家なんていっても、有形無形様々だとは思いますが、ここに登場する人たちが素敵なのは次の1点に尽きます。それは、ビジネスとしての成功をおさめて雇用を創出しながら、人道主義や環境への配慮を、同時になし得ているところ。この経済←→環境/人道主義という関係は、対立する2項だと思われがちですが、いやいやそうでもないようなんです。前書きに登場する「私たちが必要としているのは、これまで存在しなかったものを想像できる人間である」というJ.F.ケネディの言葉ではないけど、「探究心」と「根気」と「想像力」と「決意」をもって、人類の新たなる問題に立ち向かう新手のヒーローたちの行動記録と呼べる21世紀で最も重要な1冊のひとつだと思います。
著者2人のアイドルであるグラミン銀行の創始者ムハマド・ユヌスの話をはじめ、この本に登場する誰の言葉を聞いても、結局のところ、変化の障害になっているのは、「とにかく新しいことが嫌いで、今のままがいいと思っている人たち」だと、よくわかります。僕らが住むこの国の中枢に、なるだけそういう人が少ないことを心から祈りながら、暮らす僕らは行動していくしかないんですね。
著者:シルヴァン・ダルニル/マチュー・ルルー
出版社:日経BP社
フランスの若者2人が、縦横無尽に世界を旅しながら、これからの世界を変えるであろう社会起業家を取材し、紹介するエッセイ本。様々な分野でのサステナブル・デベロップメント(持続可能な発展)をキーに、話題のムハマド・ユヌスやスローフードの提唱者カルロ・ペトリーニなどが登場。とにかく老若男女、誰でも必読。彼らの最近の活動は http://www.80hommes.com/
2008.3.19 Yoshitaka Haba : BACH
幅 允孝(はばよしたか)
BACH(バッハ)代表。ブックディレクター。国立新美術館ミュージアムショップのスーベニアフロムトーキョーやLOVELESS、CIBONEなどにおける本のディレクションのほか、編集、執筆など、本周りのあらゆる分野で活動中。今年に入ってから、SHIBUYA PUBLISHING BOOKSELLERS、大阪の阪急百貨店メンズ館のThe Lobby、銀座のHANDS BOOKSがオープンしました。
URL: www.bach-inc.com